第3世代 SS-OCTを導入しました。

当院でも網膜構造を精密に検査可能な光干渉断層計(OCT)を導入しております。

通常の眼底写真撮影装置が網膜の表面の構造を2次元画像化する装置ですが、OCTは網膜の断面構造を3次元的に画像化する装置です。

 

この装置により、眼底写真だけではわからなかった網膜の構造から、それによってわかる加齢黄斑変性や糖尿病網膜症による黄斑浮腫などの病態理解が深まるようになりました。今やOCTは眼科診療に必須の装置となりました。

 

第1世代がタイムドメインOCT(TD-OCT)と呼ばれ,1997年頃に日本に導入されました。初期のものは画像も荒く網膜の大まかな構造しかわかりませんでしたし、撮影にも時間のかかる装置でしたが、画期的なものでした。以下の写真が網膜の中心部の黄斑と呼ばれる部位をTD-OCTで撮影したものです。

第2世代OCTがスペクトラルドメインOCT(SD-OCT)と呼ばれTD-OCTよりも短時間に撮影できるようになりました。また高解像度の画像を得られるようになり2008年頃から一般病院や開業医に普及するようになり、今でもほとんどの医院や病院で使われているのがこのSD-OCTとなっています。

 

第3世代OCTと呼ばれるものがスウェプトソースOCT(SS-OCT)と呼ばれ、SD-OCTでは0.8μm(800nm)帯域の波長を使っていましたが、SS-OCTでは1μm (1000nm)帯域のより長い波長を用いることにより、細胞による光の吸収が少なくなり(損失が少ないため)、更なる高解像度で網膜の詳細な構造がわかるようになりました。また長い波長を用いることでより深くまで光が到達(高浸達)するため、網膜の更に奥の脈絡膜の構造まで一度に描写できるようになりました。また撮影時間もSD-OCTよりもさらに短くなり、患者負担の軽減にも役立つOCTとなりました。

加齢黄斑変性など、OCTでないと詳細のわからない病気があるためOCTは日常診療に必須となっています。SD-OCTよりも更に高解像度のSS-OCTを用いることは患者説明に有用なことや、また日常診療の質を上げることに必要な機械といえると思います。

また今回導入したSS-OCTでは、OCTangiographyと呼ばれる検査が可能となりました。この検査により、網膜の血管や加齢黄斑変性という病態の主な場所となる脈絡膜の血管の状態を画像化することができるようになりました。

今までは血管の状態をみたい場合、造影剤を用いて血管の検査していましたが、時間がかかることやアレルギーのリスクがある患者負担の多い検査で、何度も検査できるものではありませんでした。

OCTangiographyでは数秒で血管の状態をみることでき、加齢黄斑変性の異常血管や、網膜静脈閉塞症で血流の途絶えた網膜の状態を簡単迅速に画像化することができるようになりました。

上の画像が網膜の黄斑の血管をとらえたOCTangiographyとなります。網膜の血管が詳細に画像化されております。

ただし造影剤検査でないとわからない疾患や病態もあり、造影剤検査が要らないというわけではなく、患者負担やリスク、OCTangiographyでは何回もリスクなく撮れる利点などそれぞれの長所短所を理解しと検査を組み合わせていく必要はあると考えます。

以上の装置を導入しており、診療の質の向上と患者負担の軽減など考えて、日々の診療を行っていきたいと考えております。

 

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